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カーボンクレジットの制度や活用事例について徹底解説

更新日:2023年10月12日

みなさん、こんにちは。
久野商事の久野です。

2015年にパリ協定が締結され、2020年以降の温室効果ガス削減に関する世界的な取り決めが示されました。

これにより、世界中でカーボンニュートラル(大気中のCO2排出量と除去量のバランスが取れている状態)に向けた取り組みが進められています。

この取り組みの一環として、カーボンクレジット市場が急速に拡大しています。

日本でも2023年10月11日、東京証券取引所にて正式にカーボン・クレジット市場が開設され、「J-クレジット」の売買が開始されました。

今回は、カーボンクレジットについて、詳しく説明します。

カーボンクレジットについて

初めに、カーボンクレジットについて説明していきます。

カーボンクレジット(carbon credit)とは、CO2の排出量見通し(ベースライン)に対し、実際の排出量が下回った場合、 その差分をCO2排出量市場(主に企業間)で売買可能にした仕組みのことです。

ベースラインは削減対策をしなかった場合の排出量を基に設定され、クレジットは排出削減単位「t-CO2(=1トン)」で認証されます。

カーボンニュートラルについて

カーボン・ニュートラルとは、CO2総排出量と同等の量を吸収または削減することによって、実質的にゼロになる状態を指します。

再生可能エネルギーの利用、エネルギー効率の向上、森林の保護・植林、カーボンオフセットなどの手段が使われます。

カーボンニュートラルの同意語にネットゼロ(大気中の温室効果ガス排出量と除去量のバランスが取れている状態)があります。

カーボンオフセットについて

カーボンオフセットとは、個人や社会の活動により排出される温室効果ガスについて、
主体的にこれを削減する努力を行うとともに、排出量削減が困難な部分をカーボンクレジットを購入するなどし、その排出量の全部又は一部を「埋め合わせる」という考え方です。

カーボンオフセットについて

カーボンクレジットの取引制度について

次に、カーボンクレジットの代表的な取引制度を2つご紹介します。

①ベースライン&クレジット制度(削減量取引)

ベースライン&クレジット制度は、炭素排出の削減等を実施し、その削減した分をクレジットとして取引する制度です。

①ベースライン&クレジット制度(削減量取引)

ベースライン&クレジット制度表

②キャップ&トレード制度(排出枠取引)

キャップ&トレード制度は、国が定めた削減目標を達成するために温室効果ガス排出量にキャップ(限度)を設け、その枠内に収まるようにトレード(取引)することから、「キャップ・アンド・トレード」と呼ばれており、欧州連合(EU)が行っている排出量取引制度もこれです。

ベースライン&クレジット制度に比べ、温室効果ガスを多く排出する産業への規制・対策的な側面を持ちます。

②キャップ&トレード制度(排出枠取引)

【表】キャップ&トレード制度(排出枠取引)

カーボンクレジットの種類と仕組みについて

①国際的なクレジットメカニズム

■CDM(クリーン開発メカニズム/排出枠取引)

CDM(Clean Development Mechanism)は、途上国で実施された排出削減プロジェクトに、先進国が投資する形式のカーボンクレジット制度です。

京都議定書(1997年採択・2005年発効された国際的な気候変動に関する協定)により規定されており、国連が主導しています。

技術や資金を提供した先進国は、それにより削減できた炭素量を自国の削減量として計上し、途上国の持続的な発展にも寄与できる仕組みです。

CDM (クリーン開発メカニズム/排出枠取引)

■JCM(二国間クレジット制度/削減量取引)

JCM(Joint Crediting Mechanism)は、途上国と先進国が共同で温室効果ガスを削減し、それをクレジットとして取引し、削減の成果を共有する制度です。

JCM(二国間クレジット制度/削減量取引)

②日本政府・自治体によるクレジットメカニズム

■J-クレジット

日本政府によるクレジットメカニズムとして、先述のJCM(二国間クレジット制度)のほかにJ-クレジットがあります。

日本取引所グループ(JPX)は2023年10月11日、東京証券取引所にて正式にカーボン・クレジット市場を開設し、「J-クレジット」の売買が開始されました。

J-クレジットでは、クレジット創出者が行った温室効果ガスの排出削減・吸収増加につながる取り組みを、国(経済産業省、農林水産省、環境省)が認証します。

そこで認証されたクレジットを、クレジット購入者が購入し、自社の削減量として公表することができるのです。

■地方自治体(都道府県)によるクレジット制度

東京都と埼玉県は、平成22年9月17日付でキャップ&トレード制度(排出枠取引)の連携に関する協定を締結し、「削減義務量」を超えて削減した分を、クレジットとして取引できるという仕組みが運用されています。

このほか、

■京都府「京-VER(Kyoto Verified Emission Reductions)

■滋賀県「びわ湖カーボンクレジット

■伊丹市、飯南町、阪南市「ソーシャルクレジット

など、国によるメカニズムとは別に、地方自治体による独自のカーボンクレジット制度が導入されています。

③民間事業者によるボランタリーなクレジットメカニズム

■VCS

VCS(Verified Carbon Standard)とは、温室効果ガス排出量を削減するプロジェクトにクレジットを発行するためのカーボンクレジットメカニズムです。

2023年現在、世界で最も多く利用されており、信頼性がとても高いクレジットメカニズムです。

VCSは国際的なカーボンオフセット基準管理団体【Verra】によって管理されており、世界中の様々なプロジェクトが認証を受けています。

最大の特徴はクレジットの創出方法で、現在認められているもので11種類があり、さらに新規の方法論を受け入れています。

認証を受けたプロジェクトにはVCS事務局からクレジットが発行され、発行されたクレジットはVCS Program Registryで登録・管理されます。

【VCSで認められている創出方法】
「エネルギー」「工業プロセス」「建設」「輸送」「廃棄物」
「工業」「農業」「森林」「草地」「湿地」「家畜」「家畜と糞尿」

■Gold Standard

ゴールド・スタンダードとは、 CDM (クリーン開発メカニズム)や JI (共同実施)プロジェクトの「質」の高さに関する認証基準です。

プロジェクトが、気候変動防止と持続可能性により高い水準で貢献をしたことを保証し、結果としてより品質の高いクレジットを生み出すことが、ゴールド・ スタンダードの目的です。

■Jブルークレジット

「Jブルークレジット」は、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合が発行・販売しているブルーカーボン・クレジットです。

ブルーカーボンとは、藻や水草、マングローブなどの海洋植物が、CO2を吸収して作り出す有機炭素化合物で、優れたCO2吸収源として注目されています。

ボランタリー(自主)クレジットは、公的機関・公的報告への適用は未だ限定的です。

しかし、事業活動において自主的にカーボンニュートラルへ取り組む場合の手段として、ボランタリークレジットは非常に有効です。

ステークホルダー(金融機関・株主・投資家など)へ取り組みをアピールすれば、企業のイメージ向上に繋がります。

カーボンクレジットのメリットとデメリットについて

カーボンクレジットのメリット

■クレジット売却益を活用することができる

クレジットの創出者は、クレジットの売却で得た利益を設備投資や、新たな事業への投資に活用し、事業活動の幅を広げることできます。

■地球温暖化対策になる

地球温暖化の主要な原因である温室効果ガスの削減を目的とするカーボンクレジットは、地球温暖化対策になります。

■社会全体の脱炭素意識を育てることができる

カーボンクレジットに参加し、取り組みを見える化することで企業や個人に環境への影響を意識させます。

これにより、気候変動に対する関心と認識が高まり、脱炭素への取り組みへの意欲が増します。

カーボンクレジットのデメリット

■脱炭素化が進みにくくなる懸念がある

カーボンクレジットを購入することで、企業や個人は自身の排出量を削減する必要がなくなると感じてしまいます。

これにより、実際の行動が減少し、本来の環境保護活動が阻害される可能性があります。

■カーボンクレジットのプロジェクトが実施される地域において、地元コミュニティが不利益を被る可能性がある

カーボンクレジットのためのプロジェクト、特に森林保護や再生可能エネルギープロジェクトでは、土地の使用が必要です。

このため、その土地の利用に関して地元の住民や農民と競合が生じることがあります。

また、特定の土地が保護対象になると、地域住民の資源利用(木材伐採や採取、水源の利用)に制限が加わることがあります。

カーボンクレジットの今後の課題について

制度の乱立(活用のハードルが高い)

カーボンクレジットには多くの種類や制度があり、それぞれの認証方法が複雑なケースが多いです。

そのため、排出量削減に取り組む事業者はどの制度を活用したらいいのかわかりにくく、購入を躊躇する要因となっています。

炭素吸収・除去系の認証方法が確立されていない

カーボンクレジットのプロジェクトは、排出量削減系と炭素吸収・除去系の2つに分かれます。

炭素吸収・除去系は既存の炭素をマイナスにする作用があり、カーボンニュートラルに向けて拡大すべきですが、削減量の算定・モニタリング方法が未確立であり、その促進が難しい状況です。

特に日本は広大な森林を有しているにもかかわらず、それを活かしきれていないという課題があります。

価格設定が不明瞭

国内のカーボンクレジット取引は、主にプロジェクトごとに行われています。

しかし、この方法では取引の量や価格が不透明であり、カーボンクレジットの需要と供給の拡大を妨げています。

また、一般の人々には情報が限定的で、適正価格や価格の変動がわからないという課題もあります。

非化石証書について

非化石証書とは

非化石証書は、再生可能エネルギーなどの非化石電源で発電された電力=「非化石の電気」の環境価値を証明するものです。

小売電気業者は、非化石証書を購入することで、CO2フリーの電気を販売でき、「エネルギー供給構造高度化法」で定められた「非化石電源44%」の目標達成に利用できます。

非化石証書は、非化石電源である再生可能エネルギーで発電した電気を可視化し、価値を与えることで、再生可能エネルギーを普及させるという目的を持っています。

また、企業が非化石証書による環境価値を組み込んだ電力プランを契約することで、実質的にクリーンな電気を使用していることになります。

カーボンクレジットと非化石証書の比較

非化石証書

カーボンクレジットと非化石証書は役割が異なることが分かりますが、脱炭素を進める上ではいずれも欠かせない存在と言えます。

ビジネスにおけるカーボンクレジットの活用事例について

《ファミリーマート》

東京都豊島区に本社を置くコンビニエンスストアのファミリーマートは、2009年から、カーボン・オフセットつきレジ袋を導入し、地球温暖化対策強化に取り組みはじめています。

レジ袋を使ったカーボン・オフセットの取り組みは、コンビニ業界で初めての試みです。

また、環境に配慮するプライベートブランド「We Love Green」を立ち上げ、インドの水力発電プロジェクトから排出権を買い取ることでカーボンオフセットを導入しています。

《凸版印刷株式会社》

会議を開催すると、参加者の移動や開催中のエネルギー消費、また会議の運営に際して、温室効果ガスが排出されます。

東京都に本社を置く凸版印刷株式会社は、2019年度に計6回開催した社内環境関連会議に伴い発生した温室効果ガスを、カーボンクレジットを活用してオフセットする取り組みを行いました。

《杉橋興産株式会社》

滋賀県で「今津サンブリッジホテル」を運営する杉橋興産株式会社は、クレジットで得た収益を地域貢献活動に利用しています。

空調や給湯の設備をより高効率なものに更新するなどして、温室効果ガス排出量を削減しました。

そうして創出したクレジットの収益を、老人ホームでの慰問・食事提供活動や、地域の子どもへの食育活動に活用しています。

またこれらの取り組みの結果「第7回滋賀CSR経営大賞」を受賞しています。

カーボンクレジットの個人取引について

愛知県名古屋市に本社を置く脱炭素化支援株式会社が、2022年11月21日に個人・法人を問わずカーボンクレジット「J-クレジット」を売買できるECサイト「脱炭素貨値両替所」をスタートしました。

「省エネルギー」、「再生可能エネルギー(再エネ電気)」、「森林」などの種類別に、日本円との“両替レート”を表示して個人・法人を問わず「J-クレジット」の売買ができる日本初のECサイトです。

開設日から 2023年6月30日の間に個人6名が日本政府運営の「J-クレジット」をそれぞれ100t-CO2、合計600t-CO2を個人の資産運用目的として取得・保有しました。

【J-クレジット個人保有内容】

・【省エネルギー】:4名:各100t-CO2:合計400t-CO2
・【再生可能エネルギー】:2名:各100t-CO2:合計200t-CO2

・合計:6名:600t-CO2

まとめ

一口に「カーボンクレジット」と言っても、さまざまな種類が存在し、日本国内での個人取引も開始されました。

今後もカーボンクレジット市場の拡大が予想される一方で、注意すべきポイントがいくつかあります。

【信頼性の確認】 取引相手やカーボンクレジットプロジェクトの信頼性を確認しましょう。信頼できる発行者や取引所を選ぶことが重要です。

【規制と法令遵守】 カーボンクレジット市場は規制が進化しており、法的要件に従うことが不可欠です。法令を遵守しましょう。

【透明性と情報】取引時に透明性が確保されていることを確認し、市場に関する情報を注意深く調査しましょう。

【カーボンオフセットの適切な使用】カーボンクレジットは削減活動において、あくまで「補完」手段です。過度に依存せず、自身の排出削減活動も推進しましょう。

【未来の変動に備える】 カーボンクレジット市場は変動する可能性があるため、将来の変化に対応できる戦略を考慮しましょう。

これらの要点を考慮しながら、カーボンクレジット市場での取引を検討し、持続可能な環境への貢献を実現しましょう。

尚、久野商事では温室効果ガス削減に有効な太陽光発電用資材を扱っております。

太陽光発電に関してご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

久野 将成

フェンス一筋数年。IT界からフェンス界に転生した久野です。
太陽光フェンスやアニマルフェンスについてのウンチクを中心に書いていきます。

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