2023.04.14
防獣・獣害対策
鳥獣対策の補助金について徹底解説【2023年最新】
更新日:2023年4月11日
みなさん、こんにちは。久野商事の久野です。
突然ですが『鳥獣』という言葉をご存じでしょうか。
鳥獣は『ちょうじゅう』や『とりしし』などと読み、鳥やイノシシなどの哺乳動物のことを意味します。
近年、この『鳥獣』が日本で深刻な問題となっています。
2021年時点で、鳥獣による農作物の被害額は約155億円と報告されています。
年々被害額は下がってきていますが、依然として高い被害額であることや農家の方の意欲減退が問題になっています。
そこで農林水産省は「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」に基づき、鳥獣対策をおこなう事業へ補助金を出しています。
(※2023年度の募集は2月28日で締め切っております)
今回は鳥やイノシシ、トドなどの海獣も含めて「鳥獣」として、鳥獣対策の補助金について解説していきます。
目次
鳥獣被害の事例紹介
はじめに鳥獣被害について紹介していきます。
最近の鳥獣被害は農作物のみならず、森林や河川など幅広い範囲で起きています。
例えば、鳥獣が原因で農家を辞める方もいます。
その他、森林や河川、海での希少植物の食害により、生態系の破壊なども問題となっています。
①農作物の被害について
2021年の農作物被害額は155億円で全体の約7割がシカ、イノシシ、サルによる被害になります
②水産被害について
河川や湖ではカワウといわれる水鳥によるアユなどの捕食による生態系の破壊があります。
海上ではトドによる漁具の破損が深刻な問題になっています。
③森林の被害について
森林の被害面積は2021年時点で年間5,000ヘクタールといわれています。これは東京ドーム約1,070個分の大きさで、シカによる被害が7割を占めています。
引用元:2023年農林水産省「鳥獣被害の現状と対策」
鳥獣対策の補助金について
鳥獣対策における補助金の正式名称は「鳥獣被害防止総合対策交付金」といわれています。
2022年度の予算は約120億円、さらに補正予算として37億円追加された大規模な事業になりますが、今年の申請は2023年2月28日で終了しております。
補助金の目的について
補助金には3つの支援項目があるため、それぞれを説明していきます。
①鳥獣の捕獲等の強化
地域ぐるみでの鳥獣の調査、捕獲や狩猟における備品や人手確保などを目的としています。
②ジビエフル活用への取組の支援
メニューの開発や飲食店への展開、ジビエ加工品の運搬などの支援を目的としています。
③野生鳥獣の侵入を防止する侵入防止柵の整備
主に侵入防止柵の設置や、既存設備の補強品の購入支援などが目的になっています。
補助金を活用した事業の目標について
補助金を活用した事業全体の目標として、以下のような目標が設定されています。
①2023年中に農作物被害を及ぼすシカ、イノシシの生息頭数を約207万頭にまで減らす
2018年の生息数(中央値)はシカが25万頭、イノシシは19万頭といわれています。
しかし、2022年時点でシカが218万頭に、イノシシは87万頭にまで急増しています。
そのため、シカやイノシシに関しては人と野生動物との共存をしていくために、侵入防止策だけでなく、個体管理をして生息数を調整する必要があると考えられています。
②2025年までに野生鳥獣のジビエ利用量を4,000tに増加させる
狩猟は鳥獣対策として有効な手段ですが、その一方で狩猟された野生動物の廃棄が問題になっています。
野生動物を廃棄するためには、運搬から処理までの費用や人手不足や埋没場所の不足、処理中の悪臭など様々な問題があります。
そこで野生動物を廃棄ではなく、ジビエ料理として活用することで廃棄問題の軽減やジビエ文化の普及としても役に立つと考えられています。
補助金の流れについて
補助金は国から各都道府県や民間団体へ給付されます。
それぞれ実施できる事業が異なるため、民間団体などはジビエにおいてのプロモーション活動のみ支援対象になっています。
また鳥獣対策としての捕獲などの活動に対しては、国から都道府県に定額支援として給付されます。
詳しくは農林水産省の資料をご確認ください。
引用元:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/attach/pdf/index-417.pdf
補助金の対象になる事業について
ここでは、補助金の対象となる鳥獣対策の事業について解説していきます。
鳥獣の捕獲等の強化
① 捕獲活動経費の直接支援
② 新規猟銃取得に係る支援
捕獲した鳥獣1匹ごとに給付金が支払われます。ほかにも罠の導入費用なども対象になります。
③ 都道府県が行う広域捕獲に係る調査、捕獲活動、人材育成等の支援
④ クマに対する地域ぐるみの総合的な対策の支援
都道府県や各地域が先導しておこなう、地域ぐるみの鳥獣捕獲が対象になります。狩猟免許の取得への支援なども含まれます。
⑤ ICTを総動員した被害対策のモデル地区の整備
ICT(情報通信技術)を利用した事業になります。具体的には、赤外線カメラやドローンを使用した生態調査、罠の遠隔管理などが対象になります。
ジビエフル活用への取り組み
① 処理加工施設やジビエカー、簡易な一次処理施設等の整備
② 処理加工施設と一体となった加工製造設備の整備
③ ジビエカーのリース導入支援
処理加工施設と一体となった加工製造(缶詰、パッキング)のための設備の整備や加工品を運搬するジビエカーのリースなどが主に対象になります。
④ ペットフード等を含む多様な需要拡大のため、プロモーション等への取組を支援
ペットフード原料の安定供給や、皮革などの再利用に向けた取組が対象になります。
⑤ 広域搬入体制の全国展開に向けたモデル整備の取組を支援
処理加工施設への搬入方法から、ジビエ食材の全国展開の実証が対象になります。
⑥ ジビエを扱う飲食店の拡大に向けた取組を支援
ジビエ料理に関する指導からメニュー開発支援、処理加工施設と飲食店の商談会などを実施することが対象になります。
鳥獣の侵入を防止する柵の整備
侵入防止柵、焼却施設、捕獲技術高度化施設等の整備及び既設柵の地際補強資材の導入等
侵入防止のフェンス購入費から設置、既存のフェンスなどの補強資材導入費や野生動物の焼却施設の整備費が対象になります。
引用元:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/yosan/attach/pdf/yosan-52.pdf
2022年までの補助金事業の実績例
ここではいままでの補助金事業の例を紹介していきます。
①宮城県加美郡色麻町(かみぐんしかまちょう)
色麻町は、2021年に農村振興局長賞(被害防止部門(団体))を表彰されました。
こちらの事業は国から宮城県に給付された補助金でおこなわれました。
活動内容
・専門アドバイザーを招き、住民主体で侵入防止柵の設置
・小学生や高校生向けに鳥獣被害などの勉強会の取り組み
・鳥獣捕獲監視システムの導入
など
被害金額の推移
約270万円(2016年)→約80万円(2020年)
引用元:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hyousyou_zirei/attach/pdf/hyosyo_jirei-1.pdf
②個人
2021年に農林水産大臣賞(被害防止部門(個人))を受賞された方になります。
※氏名は伏せさせていただきます。
こちらは国から佐賀県に給付された補助金でおこなわれた事業になります。
活動内容
・現場で求められる捕獲道具・捕獲技術の開発・改良
・人材育成のため自ら塾を立ち上げ、県内外の各地域における総合的な被害対策のリーダー育成に尽力
・捕獲した鳥獣の個体データの提供により、捕獲や、成獣雌を優先した捕獲
など
被害金額・面積の推移(佐賀県)
被害金額 約4.1億円(2007年) → 約1.9億円(2020年)
被害面積 約1,700ha(2007年) → 約190ha(2020年)
引用元:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hyousyou_zirei/hyosyo_jirei.html
まとめ
すでに、2023年度の補助金申請は既に終了していますが、来年度の申請など検討されている方がいましたら、情報収集にお役に立てればと考え、鳥獣対策における補助金について解説してきました。
現在の鳥獣対策は捕獲や狩猟では法律の観点や制限もあるため、一般人が対策できる内容は抑止効果として、フェンスなどの設置が一番有効だと考えています。
尚、久野商事では高品質で低価格なフェンスを提供しているため、ご興味のある方はぜひコチラからご覧ください。
その他、雑草対策として草刈りなどをおこなっている方はより時短になる防草シートも提供しているためご興味ありましたら、ご確認ください。