2022.12.28
お役立ちコラム
地熱発電の仕組みついて徹底解説
みなさん、こんにちは。
久野商事株式会社の久野でございます。
世界中で環境問題について取り上げられている今、環境に優しいエネルギーとして、地熱発電が注目されていることをご存じでしょうか。
以前から、日本は火山帯に位置するため、地熱利用は注力されており、東北や九州を中心に安定して発電ができるエネルギーとして展開されています。
そこで今回は地熱発電の仕組みから今後の見解も含めて説明していきます。
目次
地熱発電の仕組みについて
まずはじめに、地熱発電のしくみについて説明します。
地熱発電は、地下のマグマの熱エネルギーを利用した発電方法となります。
地上で降った雨は、地下の高温マグマ層まで浸透すると、マグマの熱で蒸気になって地下1000m〜3000m付近に溜まります。
地熱発電では、この高温の蒸気を取り出し、タービンを回転させることで電気をつくる仕組みとなっています。
発電方法の種類について
発電方法は主にフラッシュ発電とバイナリー発電の2種類に分けられます。
フラッシュ発電について
フラッシュ発電は地下の高温の蒸気を直接利用して発電用のタービンを回します。
地下から200℃以上の高温の熱水をくみ上げられる場合に適した方法となります。
フラッシュ発電には主にシングルフラッシュ発電とダブルフラッシュ発電の2種類があります。
①シングルフラッシュについて
シングルフラッシュ発電は、地下でフラッシュ(減圧沸騰)した蒸気と熱水が混合した地熱流体から、蒸気を気水分離器で1度だけ分離し、その蒸気でタービンを回します。
日本の地熱発電所のほとんどがシングルフラッシュ方式を採用しています。
シングルフラッシュ発電
引用元:中部電力 地熱発電のしくみ
②ダブルフラッシュについて
ダブルフラッシュ発電は、フラッシャー(減圧器)を利用して汽水分離器で分離した熱水から蒸気をさらに取り出せるようにしたものとなります。
これにより、高圧蒸気と低圧蒸気の両方を用いてタービンを回すことが可能となり、シングルフラッシュと比べて、より効率的に発電をおこなえます。
引用元:中部電力 地熱発電のしくみ
バイナリー発電について
バイナリー発電は、水よりも沸点の低い二次媒体を温めて作成した蒸気を用いてタービンを回します。
バイナリー発電は、既にある温泉熱(水)や温泉井戸等を活用します。
そのため、新たな掘削や還元井等を必要としないため、環境にも優しい発電方法となります。
引用元:中部電力 地熱発電のしくみ
地熱発電の発電手順について
ここでは地熱発電の発電手順について表で説明します。
手順 | フラッシュ発電 | バイナリー発電 |
1 | 地熱貯留層に生産井を掘り、地下でフラッシュ(減圧沸騰)した蒸気と熱水が混合した地熱流体を取り出します。 | 生産井から地熱流体を取り出します。 |
2 | 気水分離器で地熱流体を蒸気と熱水に1回だけ分離します。 ※ダブルフラッシュ発電の場合は、取り出した熱水を減圧して低圧の蒸気を取り出します。 | 地熱流体で二次媒体を温め、蒸気化します。 二次媒体を温めた後の地熱流体は、還元井から地下に戻ります。 |
3 | 取り出した蒸気を用いてタービンを回転させ、発電します。 | 二次媒体の蒸気でタービンを回転させて発電します。 |
4 | 発電し終わった蒸気は復水器で温水にし、さらに冷却塔で冷ました後、復水器に循環して蒸気の冷却に使用します。 | 発電に使われた二次媒体は、凝縮器で液体に戻し、ポンプで蒸発器に送られます。 |
地熱発電のメリットとデメリットについて
次に、地熱発電のメリットとデメリットについて説明します。
地熱発電のメリット
地熱発電には、発電時にCO2をほとんど排出せず、エネルギー源枯渇のリスクもないというメリットがあります。
地熱発電のデメリット
一方で、発電設備を作るための調査や開発に膨大な時間とコストがかかる上に、地熱発電に適した場所が国立公園の中や温泉地にあり開発が進みにくい点がデメリットとなります。
地熱発電に適した場所について
ここでは地熱発電に適した場所について説明します。
地熱発電に適しているのは、火山の近くの平坦な土地となります。
理由は地下の蒸気を取り出すために地面を深く掘り下げるためとなります。
そのため、山のような地域の場合、より深く掘り下げなければならず、コストが掛かります。
尚、日本国内で地熱発電に適している場所は断層の付近が多い北陸、東北、九州、北海道などのエリアになります。
世界と比べた地熱発電の国内現状について
ここでは、世界と比較した日本の地熱発電の現状について、表にまとめて説明します。
順位 | 国名 | 資源量(万kW) | 地熱発電設備容量(万kW) |
1 | アメリカ | 3000 | 372 |
2 | インドネシア | 2779 | 186 |
3 | 日本 | 2347 | 61 |
4 | ケニア | 700 | 68 |
5 | フィリピン | 600 | 193 |
6 | メキシコ | 600 | 92 |
7 | アイスランド | 580 | 71 |
8 | ニュージーランド | 365 | 98 |
9 | イタリア | 327 | 92 |
10 | ペルー | 300 | 0 |
出典1:JOGMEC 世界の地熱発電
出典2:経済産業省 資源エネルギー庁 もっと知りたい!エネルギー基本計画④ 再生可能エネルギー(4)豊富な資源をもとに開発が加速する地熱発電
日本は世界第3位の豊富な地熱資源量を持っており、地熱発電のポテンシャルが非常に高い国といえます。
しかし、実際に導入されている発電設備容量は、約60万kW程で、資源量に対する割合から考えると少ないと思います。
理由としては、地熱発電の開発はリスクやコストが大きく、資源が北海道や東北、九州など火山地帯に偏って存在するため、発電に適した箇所が限られる点になります。
さらに、地熱を利用することで、温泉資源への影響を心配する地元の声があることも影響しています。
国内における地熱発電の今後について
今後、日本国内では地熱発電がより発展するといわれています。
今回は、経済産業省の資源エネルギー庁が今後おこなう方針をまとめて解説していきます。
コストの削減
地熱発電では、地熱貯留槽を見つけてから発電開始まで約10年といわれています。
また、地面を掘り下げて調査実施しても、地熱貯留槽は必ず見つかる保証がありません。
そのため、政府は独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に地熱資源の調査を先導的に実施しています。
さらに、JOGMECの調査データを開発事業者に提供し、掘削した井戸を任意で事業者に引き継がせることで、開発のリスクとコストの低減をはかっています。
規制の見直し
自然公園や温泉事業者への配慮を前提として、地域と共生した地熱発電が進められるように、関係省庁と連携して法律による規制についても運用の見直しをおこなっています。
他にも、環境省と連携して地熱発電を進めることを目的として2021年4月に「地熱発電加速化プラン」が発表されています。
このプランでは、温泉のモニタリングをおこなって収集した科学データを事業者や地元の方に提供したり、地熱発電導入の促進区域を設定することで、開発期間を約2年短縮することを目指しています。
新たな技術の開発
開発リスクやコスト削減を目的として、技術開発もおこなわれています。
例えば、発電に必要な蒸気量が安定して維持できるように人工的に水を供給する技術(人工涵養)の開発や地下構造の調査技術の向上がおこなわれています。
これに加えて、「超臨界地熱発電技術」という新技術の開発が進められています。
この技術は、従来の地熱貯留槽のある位置よりもさらに深い位置にある超臨界状態の熱水資源を利用する発電技術で、これまでよりも大規模な発電が可能となります。
地域の理解の促進
地熱発電開発にあたっては、温泉資源への影響を懸念する声があるため、地域の人々の理解の促進が必須となります。
地元の人々の不安を解消するためにも、地元との意見交換の場を設け、勉強会や温泉への影響にかかわるモニタリング調査を開催することで、理解の促進につとめています。
また、地熱発電は発電後の熱水を二次利用できるため、農業用ビニールハウスを温めることに用いることで、地域の産業を支える役割を果たすこともできます。
まとめ
豊富な地熱資源をもっている日本では、安定して発電ができる地熱発電は有用な発電方法として期待されていますが、開発コストが高く、設置場所が限定されていることもあり、導入が進んでいないのが現状となります。
一方で、地熱発電と同程度の変換効率がある太陽光発電は導入コストが低く、住宅の屋根などにも設置できるため、再生可能エネルギーの導入を検討されている場合は、太陽光発電を導入することをおすすめします。
久野商事では、太陽光発電に関わる部材の販売から工事まで一貫してご依頼頂けます。
また、太陽光パネルの洗浄や草刈りといったメンテナンスもおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせください。