2021.06.29
太陽光
ソーラーシェアリングについて徹底解説
更新日:2023/11/14
みなさん、こんにちは。久野商事の久野でございます。
突然ですがみなさんは『ソーラーシェアリング』についてどれくらい理解されてますか。
現在、日本では少子高齢化に伴い耕作放棄地が増えており、社会問題となっています。
ソーラーシェアリングはそういった耕作放棄地を活用できる画期的な発電方法として、注目されています。
今回は『ソーラーシェアリング』について説明させていただきます。
目次
ソーラーシェアリングについて
はじめに、ソーラーシェアリングについて説明します。
ソーラーシェアリングとは農地に支柱を立てて、上部に太陽光パネルを設置することで、太陽光発電と農業を両立する取り組みで、営農型太陽光発電とも呼ばれます。
ソーラーシェアリングでは農業に加えて太陽光発電からも収入を得られるため、事業者は農業経営の安定化が期待できます。
ソーラーシェアリングのメリット
次に、ソーラーシェアリングのメリットについて説明します
固定資産税が安い
農地へ太陽光発電を設置する際は地目を「農地」から、固定資産税が高い「宅地」に変更しなければなりません。
しかし、ソーラーシェアリングでは、農地を一時転用するため、地目は「農地」のままになり、宅地や雑踏地よりも固定資産税を抑えることができます。
農地の固定資産税については、こちらの記事をご参照ください。
荒廃農地や耕作放棄地を活用できる
日本の農業は少子高齢化や跡継ぎ不足により、荒廃農地や耕作放棄地が増え続けています。
こういった土地にソーラーシェアリングを導入することで、安定した収益を増やし荒廃農地や耕作放棄地を有効活用することができます。
なお、荒廃農地とは「耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では農作物の栽培が不可能な農地」のことを指し、耕作放棄地は「以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を栽培せず、この数年の間に栽培する考えのない土地」のことを指します。
適度な日陰ができる
作物の上空に太陽光パネルを設置するため、日影を作ることができます。
日影を作ることで耕作者が作業をしやすくし、作物が葉焼けや高温障害になるのを防ぎます。
二重で収入が得られる
ソーラーシェアリングでは営農と売電で収益を得ることができます。
太陽光発電で得た収益は農業に追加投資することで、持続可能な農業を期待できます。
また、農業経営が安定することで地域の活性化を見込むこともできます。
農業問題やエネルギー問題を解決できる
太陽光発電は設置制限がないことから導入が比較的容易な再生可能エネルギーです。
太陽光発電によりエネルギー課題を解決することが、健全な地球環境を作ります。
結果として高品質な作物を栽培することができます。
ソーラーシェアリングのデメリットについて
次に、ソーラーシェアリングのデメリットについて説明します。
計画立案が必要
太陽光発電のFIT制度(固定価格買取)期間は20年となります。
通常の野立て太陽光発電所であれば、中古物件として売り出すことができます。
しかし、ソーラーシェアリングは農業とセットになるため、中古として販売が難しい状況になります。
おこなう場合は 「20年間の農業と太陽光発電を両立して運営できるのか」といった長期的な目線での計画が必要になります。
また農業を次の世代へ継ぐ場合は「農業とソーラーシェアリングを両方継続できる状態なのか」判断しなければいけません。
一時転用リスク
ソーラーシェアリングを行うには、農地の一時転用許可(農地転用許可)が必要になります。
2022年現在は以下の条件を満たす場合は10年に1回申請し、それ以外の場合は3年1回、一時転用許可申請を行う必要があります。
①担い手が、自ら所有する農地または賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する農地等を利用する場合
②荒廃農地を再生利用する場合
③第2種農地または第3種農地を利用する場合
一時転用では「営農が行われること」が前提条件のため、条件を満たしていないと判断された場合、売電は中止となり設備を撤去しなければいけません。
営農が行われていないと判断される基準は、以下のような基準があります。
①営農が行われていない。
②農地における単収(面積あたりの収穫量)が、同じ年の地域の平均的な単収と比較して概ね2割以上減少している。
③農作業に必要な機械等を効率的に利用することが困難であると認められる。
参考文献:営農型太陽光発電設備について
融資が受けづらい
一時転用のリスクや長期運用の計画が必要になるため、金融機関は「ソーラーシェアリングは長期的に安定して収入を得るにはリスクが高い」と判断されます。
また、通常の太陽光発電設備よりも架台を高くする必要があるため、設備費も通常より高くなってしまいます。
結果として初期費用の回収に長い時間が必要となり、融資が受けづらいと言われています。
前提として農業の生産量がしっかりと確保されており、収入の基盤が農業で確立されていることが必須となります。
報告義務
ソーラーシェアリングでは年に1度、営農に著しく影響を与えていない(収穫量が減っていない)ことを市町村の農業委員会に報告する義務があります。
報告の結果、営農に影響があると判断された場合、設備撤去と農地復元の命令が下されます。
ソーラーシェアリングの失敗については主に営農が疎かになってしまうことになります。
ソーラーシェアリングで育てられる作物について
次に、ソーラーシェアリングで育てられる作物について説明します。
ソーラーシェアリングで育てる作物を選ぶ際には、光飽和点が低い作物を選ぶことをおすすめします。
光飽和点が高いトマトなども育てることは可能ですが、太陽光パネルにより太陽光が遮断されるため、通常の農作よりも難易度が高くなります。
そのため、「キャベツ、ネギ、ミョウガ、レモン、サトイモ、ブルーベリー」といった光飽和点が低い作物を育てる事をおすすめします。
作物種類 | 主な作物 |
野菜 | キャベツ、ネギ、里芋 |
果物 | レモン、ブルーベリー、ブドウ |
穀物 | 米、麦、大豆、そば |
ソーラーシェアリングに必要な費用について
次に、ソーラーシェアリングを行うのに必要な費用について説明します。
一般的に、50kWの太陽光発電をソーラーシェアリングで設置する場合、約1200万円〜1700万円程掛かります。
通常の太陽光発電所と異なり、架台を高くする必要があるため、費用が高くなってしまいます。
また、農業を行うため、営農の費用も追加で必要となります。
ソーラーシェアリングで利用出来る補助金について
ソーラーシェアリングで利用出来る補助金について説明します。
2022年現在、農林水産省から「営農型太陽光発電 システムフル活用事業」としてソーラーシェアリングの補助金が出ています。
対象の設備は「人件費や旅費等、農業機械や電気の自家利用のための設備等の経費」となっており、太陽光パネルや架台等、発電そのものの経費は対象外です。
限度額は補助対象の1/2までで、申請期限は令和5年度までとなっていました。
※公募は終了しました。
現在は「地域循環型エネルギーシステム構築」の営農型太陽光発電のモデル的取組⽀援として、設備設計及び導入実証を定額、1/2以内が補助されます。
詳しくはコチラをご覧ください。
ソーラーシェアリングの実例について
現在、稼働しているソーラーシェアリングについて、いくつか紹介します。
SJソーラーつくば発電所
「SJソーラーつくば発電所」は茨城県つくば市にある国内最大規模のソーラーシェアリングです。
面積は日本国内最大規模の54ha程あり、太陽光パネルは約35MW程設置されています。
「SJソーラーつくば発電所」では高さ2m程の杭基礎を利用して、朝鮮人参やアシタバ、パクチーなどの栽培を行っています。
また、杭基礎の間を3m程にすることで農業用トラクターなどが通れるように設置しているのも特徴になります。
匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所
出典:成功例から見る! ソーラーシェアリングで地域活性SBIホールディングス株式会社
「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所」は千葉県匝瑳市にある日本初の「メガソーラーシェアリング向けプロジェクトファイナンス」による日本初のソーラーシェアリングで、主に大豆や麦を栽培しています。
匝瑳第一市民発電所
千葉県匝瑳市にあるソーラーシェアリングで一般市民からの出資で立ち上がった「市民エネルギーちば合同会社(現、株式会社)」が作ったソーラーシェアリングとなります。
特徴は「パネルオーナー制度」を採用している点にあります。
パネルオーナー制度とは、一般市民(オーナー)から太陽光パネルを借り受けて、設置・発電を行い、その発電した電力を電力会社に売ることで得た代金をオーナーに支払うという仕組みになります。
オーナーになるためには太陽光パネルを購入(1枚から購入可能)するのみと簡単なため、日本全国から賛同者が集まりました。
株式会社サンフレッシュ小泉農園
株式会社サンフレッシュ小泉農園では大規模なトマト栽培を行っています。
発電出力200kWのソーラーシェアリングを導入したところ、年間600万円もの電気代削減に成功しているそうです。
匝瑳おひさま発電所
「匝瑳おひさま発電所」は千葉県匝瑳市に設置してある、国内最大のソーラーシェアリングです。
面積は耕作放棄地6万4500m2に太陽光パネル出力2,702MWが設置されています。
「匝瑳おひさま発電所」では両面受光型太陽光パネルを採用しており、太陽光パネル下では大豆と大麦を栽培しています。
出典:国内最大規模の地域共生型ソーラーシェアリング「匝瑳おひさま発電所」が稼働開始
二本松ご当地エネルギーをみんなで考える株式会社
福島県二本松市に日本初となる垂直営農ソーラーシェアリングを設置しています。
垂直農営ソーラーシェアリングとは、太陽光パネルを地面に対して太陽光モジュールを垂直に設置するソーラーシェアリングになります。
太陽光モジュールを垂直に設置することで、発電ピークを売電単価の高い朝と夕方にずらすことができます。
この発電所では太陽光パネルの間に牧草を育てています。
出典:日本初の「垂直設置型」ソーラーシェアリング、二本松市で稼働
さがみこベリーガーデン
さがみこベリーガーデンでは、太陽光発電を行いながらブルーベリーを太陽光パネルの下で栽培するソーラーシェアリングを行っています。
ソーラーシェアリングとブルーベリーは相性が抜群です。
ブルーベリーの強みは収穫量が安定していること、認知度が高く市場規模が大きいこと、商品単価が高いことです。
そのため、農業と太陽光発電の両方で安定した収入が見込めます。
出典:さがみこベリーガーデン
ソーラーシェアリングに必要な費用について
一般的に、50kWの太陽光発電をソーラーシェアリングで設置する場合、製品や施工業者によって異なりますが、約1200万円〜1700万円程かかると言われています。
ソーラーシェアリングの場合、土地代などはかかりませんが、遮光率なども考えなくてはいけません。
また、架台に間隔を開けてソーラーパネルを設置する必要があるため、通常の野立ての発電所よりも広い面積が必要になります。
農林水産省の農山漁村における再生可能エネルギーの取組事例 P.11参照にソーラーシェアリングの事例がございますので、ご覧ください。
フェンスの設置について
次に、ソーラーシェアリングでのフェンス設置について説明します。
ソーラーシェアリングは野立て太陽光発電所と違い、フェンスの設置義務はありません。
しかし、農業を行っているため、害獣被害が増えてしまいます。
獣害対策についてはコチラで詳しく説明しておりますので、ぜひご覧ください。
また、最近では銅価格高騰の影響で太陽光発電で利用するケーブルの盗難が増えています。
フェンスを設置することで盗難リスクを減らすことが出来ます。
太陽光発電所での盗難についてはコチラで詳しく説明しておりますので、ぜひご覧ください。
ソーラーシェアリングの失敗原因について
2022年になり、ソーラシェアリングが広まってきましたが、その中でも失敗してしまう方も多くいらっしゃいます。
ソーラーシェアリングの失敗原因でもっとも多いのが、作物の生育不良や販売が上手くいかなかったための、単収(農業収入)の減少です。
営農型太陽光の一時転用の更新の条件として、周辺の農地の平均水準として8割以上と定められており、それが達成できずに失敗するケースが増えています。
ただ、平均水準の8割を達成できなかったからと言ってすぐに撤去を求められる訳ではなく、その状態が数年続いた場合に撤去命令が出されるため、まじめに営農をしていれば撤去を命じられることはありません。
また、失敗の原因としてあるのが架台設置による日照量不足です。
ソーラーシェアリングの性質上、畑の上にソーラーパネルを設置するため、通常の畑よりも日照量が不足気味となります。
そのため、光飽和点が高い「トマト、ナス、ピーマン」などは生育出来なかったり、生育不良となってしまうことがあります。
もし日照不足による生育不良が原因の場合は、育てる作物を光飽和点低い作物に変える事で改善する可能性があります。
ソーラーシェアリングは課題もあるが、魅力的な発電手法
今回はソーラーシェアリングについて説明させていただきました。
ソーラーシェアリングは農業の活性化とCO2削減を同時に行える地球にやさしい事業になります。
ソーラーシェアリングはいくつか課題を抱えているものの、日本の農業が抱える問題を考えると、今後はさらに普及していくと考えられます。
農業を実施するためにも獣害・防犯対策用のフェンスを設置することをおすすめします。
また、雑草対策として防草シートを引くことをおすすめします。
久野商事ではフェンスや防草シート、架台といった太陽光発電に関わる建設資材を取り扱っております。
造成工事や電気工事も一貫してお請けすることも可能になります。
この機会に是非、お気軽にお問合せ下さい。