2021.08.23
太陽光
水上太陽光発電について徹底解説【初心者向け】
更新日:2023年3月13日
みなさん、こんにちは。久野商事の久野でございます。
昨今、SDGsが注目されたことで企業から個人まで再生可能エネルギーについての取り組みが増えています。
特に太陽光発電は再注目されており、広大な土地に太陽光パネルが敷かれている景色を見たことがある方もいるかもしれません。
今回は太陽光発電の中でも従来の地上に建てられる発電所ではなく池などの水上に建てる太陽光発電所について説明していきます。
目次
水上太陽光発電とは
水上太陽光発電とその他の太陽光発電について説明します。
水上太陽光発電について
水上太陽光発電は従来の地面や建物の屋根に太陽光パネルを設置するのではなく、水上に設置するタイプの太陽光発電所になります。
主に農業用のため池などを活用しており、水上ソーラー、フロート式太陽光発電とも呼ばれています。
水上に設置した背景は日本の場合、他国に比べて国土の面積が狭く、地上設置型の太陽光発電施設に適した土地の確保が難しいためといわれています。
その他理由として、ため池の多さにあり、日本のため池の数は農林水産省 防災課の調べで16万箇所といわれています。(2020年3月時点)
その他の太陽光発電所の設置場所について
水上太陽光発電以外にはどのような場所に設置が可能なのか説明します。
①野立て太陽光発電所
野立て太陽光発電は太陽光発電設備を遊休地や空地、田畑などに設置する太陽光発電所のことをいいます。またその中でもソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)という農地に太陽光発電設備を設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する取組があります。 作物の販売収入に加え、売電による継続的な収入や発電電力の自家利用等による農業経営の更なる改善が期待できます。
引用元:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html
②洋上太陽光発電所
今後、2024年に実施予定といわれています。
主に海の上での太陽光発電は洋上太陽光発電といわれており、パネルを浮かせて海上で発電をします
水上太陽光発電のメリット・デメリットについて
ここでは水上太陽光発電のメリット・デメリットについて説明していきます。
水上太陽光発電のメリット
まずはメリットを紹介します。
①発電効率が下りにくい
太陽光パネルは、温度が上がるほど発電効率が下がっていってしまいます。
太陽光パネルは温度が上昇し、電流は上がりますが、それ以上に電圧が下がってしまい、その結果、発電効率が落ちてしまいます。
一般的に効率よく電気を生み出す太陽光パネルの表面温度は25度とされており、真夏の場合は、知らずに発電効率を下げてしまっている可能性があります。
そのため、太陽光パネルの温度は低く保つことが理想になります。
一方で水上ソーラーは、水面の温度の方が地面より低いため、太陽光パネルの表面温度を低い状態で保てる上に、水面からの照り返しで、より多くの太陽光を集めることができます。
②障害物が少なく影ができにくい
太陽光発電は、パネルに太陽光の光が当たることで発電されます。
そのため、太陽光パネルに障害物や遮蔽物などがあると光が遮られ、発電効率が下がってしまいます。
一方で水上ソーラーの場合、設置場所はため池など周りに遮蔽物が少ない場所に設置するため、発電効率低下を心配する必要なく発電をすることができます。
③造成が不要
地上に設置する太陽光発電所の場合は、山林などに設置することが多く、その際に土地の造成が必要な場合があり、時間やコストが大きくかかってきます。
一方で水上太陽光発電は土地の造成が必要なく、周辺に邪魔な建物や樹木も少なく、経費削減の面でも、雑草の除草作業なども必要がないため経済的な負担が少なくなります。
尚、太陽光発電における造成についてはコチラで紹介しております。
④漁業への貢献
水上ソーラーを導入した場合、水不足対策になります。
パネルを水上に設置するため、太陽光の日射を遮ることになります。
そのため、結果として水の蒸発を抑え、水草、藻、青子などの発生も抑えるため、水利組合と発電事業者の両方にメリットがあります。
水上太陽光発電のデメリット
ここではデメリットを紹介していきます。
①工事実績が少ない
太陽光発電における実績は野立て太陽光発電所の設置が多い状況になります。
そのため、水上太陽光発電は工事ができる業者も少ないため、技術的な観点からみても長期間かかってしまいます。
②自然災害時の対策が必要
水上太陽光発電所を設置する場合、台風などの自然災害などの影響で増水や渇水などの問題が発生します。
そのため、自然災害が起きても問題が起きないように対策をすることが重要になります。
③防水や漏電の対策が必要
水上ソーラーは水の上に設置するため、水が原因で腐食や漏電による事故も発生リスクが高いといわれています。
そのため、防水や耐食処理などは必ずおこないましょう。
④メンテナンス業者が少ない
太陽光パネルは定期的なメンテナンス作業が必要になります。パネルの表面が汚れなどで覆われると発電効率が下がってしまうため、定期的な清掃も必要になりますが、水上太陽光発電所の場合池での作業を行える業者が限定されてきます。
日本国内の事例紹介
ここでは国内で運用されている水上太陽光発電を紹介します。
①川島太陽と自然のめぐみソーラー
「川島太陽と自然のめぐみソーラー」は埼玉県川島町にあります。2016年時点では世界最大の水上メガソーラーでしたが現在は中国の安徽省で運用されている水上メガソーラーが150MWで世界最大の大きさになります。
当時の水上メガソーラーとしては大規模な約7.5MWを要し、使用している貯水池の面積は約13万㎡とされており、太陽光パネルは2万7456枚設置してあります。
そのため、使用パネルの枚数も多く年間の発電量は、一般家庭用約2300世帯分の消費電力になります。
引用元:川島町「メガソーラー」
②千葉・ 山倉水上メガソーラー発電所
2018年3月に竣工した千葉県にある水上メガソーラーになります。
太陽光パネルは約13.7MW、年間発電量は約1617万kWhを見込み、これは一般家庭約4970世帯分の年間電力消費量になります。
2023年時点で日本最大級の水上メガソーラーになります。
引用元:京セラ
③平木尾池水上メガソーラー
「平木尾池水上メガソーラー」は香川県木田郡三木町にある出力約2.6MWのメガソーラーで、連携出力は1.99MWで、年間発電量は290万kWh程となります。
平木尾池ではハスが群生しており、ハスとの共存という珍しい水上ソーラーでもあります。
引用元:三菱電機株式会社
水利組合にとってもメリットがある
水上ソーラーを導入すると、水不足対策になります。
パネルを水上に設置すると太陽光の日射を遮る事になるので、結果として水の蒸発を抑え、水草、藻、青子などの発生も抑えれます。
そのため、水利組合と発電事業者の両方にメリットがあります。
今後の水上太陽光発電について
今後の水上太陽光発電について考察していきます。
2019年に国内で運用されている水上メガソーラーのひとつ「千葉・ 山倉水上メガソーラー発電所」にて台風第15号の強風により、火災が起き太陽光パネルが破損するという事故が起きました。
2021年時点で完全復旧されていますが、この事故により水上太陽光発電のデメリットが改めて浮き彫りになりました。
特に、復旧工事では台風被害を防ぐために以下の改善点がされています。
①局所的な力の集中が発生しないよう、フロートアイランド(水上に設置した太陽光発電システム)を単純化・小型化し6つに分けて設置しました。
②風に対する安全性を向上させるために、フロートを固定するアンカーの本数を420本から904本に増やしました。
③電気火災の発生を防止するために、電気ケーブルをプラス・マイナスで分けて保護管に入れるなどの対策をおこないました。
自然災害が多い日本では、水上太陽光発電の被害を最小限に抑える工夫がまだまだ足りてないと考えています。
引用元:水上設置型太陽光発電所「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」の復旧工事完了について
まとめ
今回は水上太陽光発電について解説してきました。
従来の太陽光発電と比べて、水上に設置することについてメリットもデメリットも両方あります。
個人的には池の数が多い日本では正しい対策をおこなった上で運用していくことが重要になると考えています。
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